いつも、がけっぷち 2014年11月

コンピューター将棋の世界

近年のコンピューター将棋の進歩を目の当たりにするたびに、「もし、コンピューターが人間に勝つほど強くなるとしたら、霞が関ビルの高さほどのコンピューターの数が必要になるであろう」と、語った丸田九段の言葉を思い出す。あれは私がまだ奨励会にいたころだから、30数年前のことだ。
その言葉は、棋士の頭脳の凄さを表すとともに、取った駒を使えるという将棋というゲームの複雑さを表すものだった。

ところが、ここ数年、ご存知のようにコンピューター将棋の進歩は恐ろしいもので、引退していたとはいえ、元名人の米長永世棋聖や、若手相手の電王戦でプロ側を圧倒している。

その大きな理由が3つある。ひとつは、局面を評価する技術の進歩だ。駒それぞれに点数をつけるのはもちろんだが、玉と金銀、飛車角との位置関係から、どちらが優勢かという分析を視覚的に行うようになり、コンピューターが苦手な序盤中判の評価関数の正確度が飛躍的に伸びたことだ。

もうひとつは、コンピューター自身が、読みこんだ膨大な棋譜を自分で学習する能力を高めたことにある。先にあげた局面評価も、その棋譜をもとに学んでいくので、大局観が技術者の棋力とは関係なく、どんどん洗練されていくことになる。

3つ目は、いうまでもなくコンピュータ自体の処理能力がとんでもなく高くなったことだ。

この3つの理由を、別の側面から分析すると、これまで選択分析という作り手の棋力に頼っていた部分を、ボナンザメソッドというチェスのルーティンを利用した全幅検索という技術を取り入れたことにより、これまで見落とされていた好守、妙手をコンピュータが読むことができるようになったことがある。ここにも処理能力の大幅な向上の恩恵がある。

最近、「ルポ電王戦」をはじめコンピューター将棋関連の本を読み漁っているのだが、「人間に勝つコンピュータ将棋の作り方」という本のあとがきに、オセロの世界では名人とコンピューターが戦いを始める時期が遅すぎたために、コンピューターが強すぎて勝負にならないという残念な事象を例にひいて、将棋もその二の舞にならないように希望するとの一文が記されていた。さらに、技術者たちはすでに人間との戦いに興味を失いかけているという。

黎明期のコンピューター将棋選手権を思い出すと、正に隔世の感がある。どうしようもないひどい手を指すコンピューターとその技術者たちを、将棋ファンがあきれながらも応援したものだ。

今は将棋のトップとコンピューターとの対決が注目され、盛り上がっているが、数年後には、その火も消えるであろう。
コンピューターは将棋棋士が研究するツールとなり、チェスと同じようにタイトル戦などの戦いを観戦するツールとなるのだろう。24将棋倶楽部や将棋ウォーズなどのネット将棋も盛んだが、将来、在野でコンピューターにより育てられたスーパーアマチュアというのも出現するのかもしれない。

オセロの世界ではすでに後手が必勝ということが計算により判明しているというが、遠くない将来、いや、ひょっとしたら数年後にも、かつて人間がコンピューターと戦ったことが語り草になるのかもしれない。

電王戦クラスタ

写真は電王戦で三浦八段と闘ったGPS将棋クラスタ。



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ライフワーク、大自然と人間の共生をテーマに二つの目線から撮影を続ける。
1、地球46億年の歴史を、空から撮る。
2、祈りを通して、人間の内面世界を露わにする。

これまで講談社出版文化賞、日本写真協会作家賞,同新人賞他、受賞多数。
 Life, Paris Match, Geo、National Geographic など海外のメディアでもフォトストーリィを発表
著書に「祈りの大地」(岩波書店)「伊勢神宮 式年遷宮と祈り」(集英社)「 鯨人(くじらびと)」集英社新書 
写真集 「The Days After 東日本大震災の記憶」飛鳥新社「伊勢神宮、遷宮とその秘儀」 朝日新聞社
 「海人」新潮社
フォトエッセイに 「時の海・人の大地」 魁星出版、「フリスビー犬、被災地を行く」飛鳥新社がある。

東京都町田市在住 大分県出身
日本写真家協会会員

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