いつも、がけっぷち 2016年06月

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ドキュメンタリー映画と4K

2016年5月、大地震以来、ネパール、ラプラック村6度目の取材を終えた。今回の映画撮影のメイン機材は、EOSのC100 Mark2 だった。ちまたでは4K撮影が進むなか、フルHDのスペックだ。
ところが、先日、機材返却をした際に映画の冒頭シーンをカメラメーカーの担当者に見せたところ、「シネマEOSでこんなにクオリティの高い映像の映画を見たのは始めてだ」
と最高の賛辞をいただいた。
そのとき見せたのは主にEF300 2.8Lレンズで撮影した映像だ。
切れ味もボケ味も最高のレンズだが、取扱いが難しく動画撮影に使われることはあまりない。私がスティールカメラマン出身だから保有しているが、映像カメラマンだったら、はなっから購入を考えないのかもしれない。
その言葉を聞きながらあらためて思ったのは、数字上のスペックにこだわり、メディアも高価でポスプロに手間がかかる4Kや8Kにこだわることの無意味さだ。
特にドキュメンタリーの世界では、フットワークが非常に重要なファクターだ。今回のような電源確保も難しいヒマラヤの奥地である現場で外部ストレージにつないで撮影するのは事実上不可能だ。高価な4K用C-Fastカードでは128Gでも30分しか録画できない。しかも後処理の負荷も著しく高くなる。
加えて現行の映画館はほとんど4K対応してない。配給するときには2Kに圧縮して渡すことになる。4Kテレビについてはご存知の通り普及率は低いままだ。
ドキュメンタリーを撮るなら写真と同じく画素数にこだわるよりも、フットワークにこだわるべきだ。切れ味のいいレンズと美しいライティング、なにより魅力的な被写体。
アシュバドル一家の密着撮影は、日常生活をともにしながら常に手元にシネマカメラを置いて行われた。どんなときもカメラを片時も手放すことはなかった。ベトナム戦争時代、沢田教一ら戦場カメラマンはごはんを食べるときも常に首からカメラを下げており、スープでカメラが濡れたという逸話があるが、まさにそんな感じだ。
そうして生まれた映像では、プナムやアシュバドルたちがまるで俳優のようにスクリーンの中で自然な「演技」をしている。常に密着していた私はさながら透明人間のようになって彼らの日常を切り取ることができた。これは大人数でロケをしていいては決して生まれることのない、個人目線の、正にスティール取材の感覚だ。

honey hunter small

そんななか、ハニーハンティングの撮影では、工夫をこらした。撮影スタッフは私とレイの二人にもかかわらず、編集された映像をあらためて見直すと、高所からメインカメラ。別角度からの望遠レンズによるサブ。そしてドローンによるさまざまな角度からの空撮、さらには、フットワークを生かして広角レンズで接近して撮った映像。それらを組み合わせることにより、あたかも4カメで撮ったようなバリエーションのある映像が成立した。知らない人がみたら、20人以上の大部隊で撮った映像に見えることだろう。
1年を超える海外ロケと密着取材、それを可能にしたのは、ワンオペ中心の少人数スタッフ。もし大人数のスタッフでこれをやったらいったいどれだけの費用がかかったか、現行のテレビ局や映画の世界ではほとんど不可能に近いだろう。
「世界でいちばん美しい村」はその内容もさることながら、公開されたらドキュメンタリー映画の革命ともいえるメソッドと映像に、大きな反響が起こるのではないか、と密かに期待している。
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ライフワーク、大自然と人間の共生をテーマに二つの目線から撮影を続ける。
1、地球46億年の歴史を、空から撮る。
2、祈りを通して、人間の内面世界を露わにする。

これまで講談社出版文化賞、日本写真協会作家賞,同新人賞他、受賞多数。
 Life, Paris Match, Geo、National Geographic など海外のメディアでもフォトストーリィを発表
著書に「祈りの大地」(岩波書店)「伊勢神宮 式年遷宮と祈り」(集英社)「 鯨人(くじらびと)」集英社新書 
写真集 「The Days After 東日本大震災の記憶」飛鳥新社「伊勢神宮、遷宮とその秘儀」 朝日新聞社
 「海人」新潮社
フォトエッセイに 「時の海・人の大地」 魁星出版、「フリスビー犬、被災地を行く」飛鳥新社がある。

東京都町田市在住 大分県出身
日本写真家協会会員

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