いつも、がけっぷち 日本写真協会賞授賞式

日本写真協会賞授賞式

先日、日本写真協会賞作家賞を受賞した。
授賞式が、6月1日、笹川記念会館で行われた。

賞の内訳はこちらの通り。
かつての年度賞は作家賞に統一された。私にはもったいないような名誉な賞です。




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この写真は嫁さんが撮ったのでご容赦を 笑

この後、スピーチを行ったのだが、震災と写真について、どうしても話したいことがあったので、
長くなるがお話しさせていただいた。最後に全文を掲載しています。







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授賞式に続くパーティーも、たいへん盛況でした。





写真協会作家賞受賞スピーチ全文


どうも石川です。僕はあまり身なりに構わないというので知られているんですが、作家賞の報告をした時の第一声が友人も妻も、あなた着るものはあるのか? でした。
あるよー、衣装ケースの中にあったのは14年前の新人賞の服。これちょっとまずいんじゃないの、記念撮影あるし。いくらなんでも前回と同じ服だなんて、というわれ、そりゃそうだね、ということもありました。

まあ、その新人賞以来もいわゆるドキュメンタリーという仕事を続けてきましたが、とりまく状況が厳しくなってきて、まわりに求められていないなら、果たしてこの仕事をやることに意味があるのか、そんな風に思うことも多々ありました。そんなときにあの3.11の大震災が起こったんですね。

その日は都内にいたんですが、なんとか翌朝自宅にたどり着いてセスナを手配、空からみる景色は想像を絶するものでした。家が流され、道が落ち、空港は浸水し、海岸線がどこにあるかわからない。ところによっては町そのものが消滅している。あるところでは、翌日になっても町が燃えていました。燃え盛る煙の下からは無数の人々の叫び声が聞こえてくるようでした。

調布飛行場へ帰還するとすぐ、私は、そのままバイクで東北へ。相次ぐ原発の爆発と放射能の雨。自分も全身に浴びて、スクリーン会場は大騒ぎ。カメラバッグを押収されるという騒ぎに。

しかしこの状況で逃げていてはドキュメンタリーをやる人間として失格ですから、それでも取材を続けたのですが、困難、そして悲惨を極める現場で果たして自分が撮影活動を続ける価値があるのか? 新聞、テレビは速報性があるからまだいい。雑誌に写真を配信しているとはいえ、自分はどうなのか。現場ではガソリンがなくて灯油がなくて死んでいく人もいるわけです。そんななか、緊急車両として、優先的にガソリンをもらって撮影を続ける価値があるのか。

問われたのは、写真家としての自分の存在。そして写真という表現にそれだけの価値があるのか、どうか、とうことでした。
撮影はそうした自問自答との戦いでした。The Days Afterという本はそうした震災翌日から60日に渡る撮影の記録です。

実はこの間、いろいろな活動をしました。車の中で寝泊まりしながら、水や燃料、生活物資を輸送したり、自分は犬を飼っていたのですが、その犬はセラピー犬といって人を癒す力があるんですね。その犬を連れて避難所や小学校を回ってフリスビーのショーや教室をやりました。震災から一年後には小学校で写真の授業などもやりました。とにかく人として自分のできることはなんでもやろうと。そういたことをやった背景には、あのとき、写真を撮る以外、何もできなかった自分へのうしろめたさもあったと思います。

しかし、今改めて思うのは、そうしたどんな活動よりも私の本業である写真の持つ力の大きさです。私が一番貢献できることがあるとすれば、それはやはり写真だったのですね
実はこの一月前まで、武蔵野の吉祥寺美術館で震災写真展をやりました。会場では来場者のすすり泣く声が耐えませんでした。みな、口を揃えていうのは、こんなことになっていたとは思わなかったと。あれほどテレビで放映されていても現場の本当の状況というのは伝わっていなかったのです。マスコミから流れてくる映像というのは受け取る側にとってみれば、テレビに映し出される時点で、どこか遠い、現実感をともなわない、いわば情報にすぎなかったのです。

一人の写真家が写真を通して感じたことを精魂込めて、一人の人間に訴えるとき、そこには情報を超えた何かがある、そのことにあらためて気づきました。ですからこの作家賞のお話をいただいた時に思ったのは、これは私個人に与えられた賞ではないのだと、これはあのとき、必死に現場を伝えようとした写真家たちと、ドキュメンタリー写真という表現そのものに送られた賞なのだということを思いました。

今回、震災を撮ったわけですが、大自然の凄さ、怖さ、そして優しさ、そしてそこで暮らす人々の姿というのは、実は僕のライフワークで、その集大成というべき写真展を、今、品川のキャノンギャラリーSで人の惑星と題し、展示しています。ぜひ、こちらも見ていただきたい。今、やっています。

最後にまず影になり日向になり私を支えてくれた妻に感謝の気持ちを伝えたいと思います。そして写真集を出版してくださった飛鳥新社の根本編集長、関係者の方々、被災地でお世話になった方々にお礼の言葉を申し上げたいと思います。
どうもありがとうございました。

                            石川梵





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まとめtyaiました【日本写真協会賞授賞式】

先日、日本写真協会賞作家賞を受賞した。授賞式が、6月1日、笹川記念会館で行われた。賞の内訳はこちらの通り。かつての年度賞は作家賞に統一された。私にはもったいないような名誉な賞です。この写真は嫁さんが撮ったのでご容赦を 笑この後、スピーチを行ったのだが、...

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ライフワーク、大自然と人間の共生をテーマに二つの目線から撮影を続ける。
1、地球46億年の歴史を、空から撮る。
2、祈りを通して、人間の内面世界を露わにする。

これまで講談社出版文化賞、日本写真協会作家賞,同新人賞他、受賞多数。
 Life, Paris Match, Geo、National Geographic など海外のメディアでもフォトストーリィを発表
著書に「祈りの大地」(岩波書店)「伊勢神宮 式年遷宮と祈り」(集英社)「 鯨人(くじらびと)」集英社新書 
写真集 「The Days After 東日本大震災の記憶」飛鳥新社「伊勢神宮、遷宮とその秘儀」 朝日新聞社
 「海人」新潮社
フォトエッセイに 「時の海・人の大地」 魁星出版、「フリスビー犬、被災地を行く」飛鳥新社がある。

東京都町田市在住 大分県出身
日本写真家協会会員

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